SPECIAL

AIRJAM 2026 LIVE REPORT

「みんな、最大級に生きてるか?」――何があっても屈しない心で待ち合わせる遊び場、それがHi-STANDARDとAIR JAMだ!

これまで難波と横山がたびたび話してきた通り、そもそもAIR JAMは「フェス」という言葉が根づいていなかった頃に興された祭りだ。1990年代後半、急激なスピードで人気を獲得したHi-STANDARDのライヴは各地でソールドアウトするようになり、チケットが取れないという声がどんどん膨らんでいった。そこで、ユースカルチャーと共にある自由なライヴハウス、自由を自分達自身で作り出そうとする姿勢に対する矛盾を感じたHi-STANDARDが、イチから広大な遊び場を作ってしまおうという考えで生み出したのがAIR JAMである。要は、元々はフェスという形式に倣ったわけでも、単に規模の拡大を見せつけるために作ったわけでもなく、好きな仲間と共に存分に遊べる自由を謳歌するための場所なのだ。お台場や豊洲の空き地、そして当時はライヴ会場として使われた例がなく、ただの野球場だった千葉マリンスタジアム(当時の呼称)に次々と遊び場を作り、それが後々、「結果としてフェスの走りだった」と語られるようになっていったのである。存在を表明する武器として生まれたパンクロックだからこそ、自分で自分の場所を作り、守っていくのは根源的なアティテュードである。なおかつ「遊び場がないなら自分達で作ればいい」という発想はストリートの根本原理でもある。そうしてハイスタはストリートカルチャーと強く結びつき、ゆえにAIR JAMは、音楽はもちろん、その音楽に乗ってスケートボードとBMXが巨大なランプを滑走する独特の空間を形成していった。ハイスタと近い世代のバンドを広く括る「AIR JAM世代」という言葉は長らく使われてきたが、その真なる意味とは音楽ジャンルの話ではなく、単なる年齢だけの話ではなく、90年代の街を自由な遊び場にする姿勢でもってカルチャーを混ぜてきた人々のことを指すのだと思う。

だが、2011年にHi-STANDARDが活動を再開して以降は、AIR JAMの在り方も、もちろんHi-STANDARD自身のマインドも、ゆっくりとではあるが変化してきたように思う。端的に言えば、「俺達が作ったカルチャーである」という提示ではなく、「俺と君で作った遊び場である」という前提でもって観客と共に進んでいこうとする姿勢が強まっていったのだ。このAIR JAM 2026のライヴ中にも、難波は「みんなで遊び場を作ったんだよね」と温かい口調で語りかけていた。『The Gift』(2017年)以降は特に、ハイスタとは3人だけのものではなく、みんなの愛を一身に受けて走り続けていくバンドなのだと。自分達がどれだけ愛され、求められているのかを認めたこと自体がハイスタにとっての大変化だったと言えるだろう。一度活動を休止してから復活し、バンドとしてのグルーヴと新たなガソリンを醸成するための時間を経たこと。ハイスタとは何なのかを改めて見つめ直してきたこと。そして、2023年に恒岡章が急逝し、それでもHi-STANDARDを絶対に止めないと決めたこと。その歩みはすべて、Hi-STANDARDがより一層人の人生に寄り添うものに変貌してきたことと直接的に関係しているはずだ。

AIR JAM史上で見ても、おそらく最も世代が広いラインナップ。19歳までのキッズ限定で照明・PA・ビデオスイッチャーの職業体験ができる施策「TEENAGERS ARE ALL STARS」の実施など、世代を超えてロックの現場を盛り上げ、ロマンを繋いでいくことがテーマになっていた2026年のAIR JAMは、Hi-STANDARDとしての未来はもちろん、Hi-STANDARDと共に生きて欲しい人々の未来を想う音楽広場だった。そして、その温かな想いは明確にライヴに表れていた。

ステージに登壇するなりピットに投げかけた「最大限に生きてるか? 本当か?」という問いから突入した“Maximum Overdrive”、<my heart feels so free/I gotta tell the world my feeling>というリリックに合わせて横山が会場全体に手を広げた“MY HEART FEELS SO FREE”。DANCE HALL CRASHERSのカリーナを舞台袖から誘い、曲中のシャウト部分をカリーナに任せた“THE PINK PANTHER THEME”。これまたLagwagonのジョーイを舞台下手から引っ張り出し、彼と共に歌った“FIGHTING FISTS,ANGRY SOUL”。何しろ人を巻き込み、人に向かい、周囲の仲間と語り合うようにHi-STANDARDは音を放ち続けていた。“Our Song”を演奏する際には、難波が「俺達の歌だよ。ハイスタ!みたいな歌。あと、みんなの歌でもある。きみもハイスタだからね。……でも、ハイスタって何なのかよくわかんないよね」というトボけたMCを披露し、横山は爆笑。さらに横山も「でも確かに、ハイスタって言われると、自分達じゃない感じがするよね!」と重ねて、本人達も「ハイスタは謎の生命体だ」と認識していること自体が、ハイスタの特異性を端的に表しているとも言えるだろう。難波が「人生の第4コーナーを回ったけれど、ここまで来たらハイスタは最強のおじいちゃんバンドになってやるんだ」と言っていたことが忘れられない。いまだ変化し、進化し、ハイスタはそのフォルムを自由に変え続けている。

NOFXのファット・マイクから提供された“I’M A RAT”、ジョーイとカリーナの故郷にかけた“California Dreamin’”、何度でもスタートを切るという宣誓たる“ANOTHER STARTING LINE”、そして“Stay Gold”。先に「温かなライヴだった」とは書いたが、マリンスタジアム全体が出血しているかと思うほどに、音が鋭く、直線的で強烈なエッジを持っていたのが素晴らしかった。3人で合わせるというより、3人がとてつもないスピードで猛進するだけで、それが奇跡的にピタリと「合ってしまっている」。そのデッドヒート感の極点が1曲ごとに更新されていくような、凄まじいスピードで音が走るライヴだった。

最後、“MOSH UNDER THE RAINBOW”を演奏する際、難波は「球場全体の電気をつけよう」と言ったが、煌々と照らされた野球場に生まれた多数のモッシュはかつての「AIR JAM 2000」を想起させるものだった。しかしあの頃とまったく違うのは、ハイスタと観客の間に一切の壁がないことだ。歌で距離を縮め、喜びを共通言語にし、笑顔で未来の約束を果たすのである。難波はステージを降りる際、「また会おうな」という短い挨拶をピットに預けたが、AIR JAMも、Hi-STANDARDも、必死に生き続けると腹を括ることで新たな力を得てきた生命体だ。だからこそ、必死に生きて、また会おうという言葉はあらゆる人の背中を押したはずだ。

また会おう、必ず。

 

SET LIST(AIR STAGE)

01. Maximum Overdrive
02. MY HEART FEEL SO FREE
03. The Gift
04. THE PINK PANTHER THEME
05. Calirornia Dreamin’
06. Our Song
07. TEENAGERS ARE ALL ASSHOLES
08. Saturday Night
09. I’M A RAT
0010. ANOTHER STARTING LINE
11. STAY GOLD
12. FIGHTING FISTS, ANGRY SOUL
13. CAN’T HELP FALLING IN LOVE

encore
14. CLOSE TO ME
15. DEAR MY FRIEND
16. MOSH UNDER THE RAINBOW

TEXT: 矢島 大地
PHOTO: