AIRJAM 2026 LIVE REPORT
ロックロマン一発から生まれる異形のミクスチャー、2026年もAIR JAMにホルモン曼荼羅を描く
登壇するなり「俺たちのAIR JAMがやって来たぞ!」という絶叫一発、Hi-STANDARDを起点にしてあらゆるストリートカルチャーが結集した人間祭を魂まで刻み込めと言わんばかりに“シミ”を投下。気持ちよく晴れたものの海から風が吹き続けるマリンスタジアムは、どうしたって音が流されやすい場所だ。にもかかわらず、ホルモンの音は一打・一音のエッジが立って、耳以上に脳天のど真ん中に刺さってくる。ヘヴィなヘドバンセクションからのモッシュパート、湿った歌謡に転じるBメロ、それらの展開を一気に打ち抜くサビメロ……といったふうに猛スピードで様相を変えていくホルモン曼荼羅の結晶みたいな曲だが、改めてそのトランジションの滑らかさに驚く。アンサンブルのキメも、音のキメ細やかさも、キレにキレている。楽曲中にダイスケはんが「ありったけの想いを込めて!」と叫ぶひと幕もあったが、言わずもがな、Hi-STANDARDに夢見てAIR JAMにぶっ飛んできた(ことはナヲもダイスケはんも繰り返し語ってきている)ホルモンにとって、このステージは何度立っても万感迫るものなのだろう。“シミ”のブリッジでは上ちゃんがサンプラーを叩き、尺八や鍵盤が折り重なってさらにサイケデリックな色彩が描き出されていくものの、ステージ上の4人の姿はめちゃくちゃ蒼いというか、改めて瑞々しいというか、徹底的にヘヴィな音塊を青春から放っているようだ。SYSTEM OF A DOWNもTOOLもKORNも、蒼い衝動で煮込んでしまう。それこそ、比肩なきホルモンの凄まじさだ。

そんなエモーションを直球で表すように、2曲目に投下されたのは“恋のスペルマ”である。ライヴの大団円として披露されることが多かった本楽曲を前半パートに挿すのは、今日はとにかく混ざって歌って踊りまくれというメッセージだろう。それもそのはず、今日ここに集っているのは、「今日しかねえ」「次はいつかわからねえ」「次があったとしても今日しかねえ」という無数の切実である。AIR JAMは不定期開催であること以上に、Hi-STANDARDのマイルストーンとして開催されてきた祭だ。だからこそAIR JAMは異様であり、貴重であり、特別なのである。当然、それはホルモンにとってもそうだろう。
マリンスタジアムを飲み込む<スペルマ>のシンガロングは、不安や孤独や傷を持ったまま、それでも人を渇望する「心の汁」のことである。そんな歌だからこそ強烈なユナイトが生まれ、ダンスが溢れ、マリンスタジアムが音楽曼荼羅と化していく。

「ずっとキッズとして、みんなと同じようにそちら側でハイスタを見ていた私達が、初めてAIR JAMのステージに立たせてもらったのは15年前のことです。私達もあなた達も、この15年でいろんなことがあったと思う。私で言えば、15年前に1歳だった娘が今は女子高生です。バンドをやってます。……今日は、15年前の自分達にも誇れるような、そんなライヴをしたいと思ってます。新しいハイスタ、新しいAIR JAM。今日は新しい伝説を作る1日にしましょう!」(ナヲ)
「俺たちはパンクロックが好きだ! 白帯のまま、Hi-STANDARDという黒帯をぶっ倒す!」(ダイスケはん)

そんなMCから放たれた“ロック番狂わせ”を聴いて、ホルモンはきっと、「自分らは白帯だ」と言うことをまったく謙遜だと思っていないのだろうなと思った。なおかつ、それがホルモンの恐ろしさであるということも痛感した。パンク、ヘヴィロック、ニューメタル、J-POPなどなどを闇鍋に放り込んで、圧倒的なメロディとユーモアでもって美しく織り上げる異形のミクスチャー。それは、未だに蒼く輝いているロックへのロマンと、まさにAIR JAMのような夢の舞台にぶち上がる純真さと、夢の舞台でこそ全員を斬り倒したいという執念から生まれているのだと思う。とにかく音の瞬発力が半端じゃない。低音は腹を殴り、ギターは耳を貫く。ああ、やっぱりロックとは狂気だ。

「今日、朝イチからカラオケブースの歌が聴こえていて、B-DASHを歌ったヤツがおったやろ。GONGONをここに連れてきてくれて、ありがとう。……あと、これは個人的なことやけど、2018年のAIR JAMの時、俺は首のヘルニアを患っていた。首を振っちゃいけないと言われていた中で、命懸けのライヴやった。でも首を振ったよ。そんな命懸けのライヴができたのは、あの日、難波さんが俺に気を遣って俺専用の楽屋を用意してくれたから。一生忘れない! あれから8年、俺はあの日のHi-STANDARDを思い出すたびに心が震えたし、そのたびに“ANOTHER STARTING LINE”に立った! 今ようやく、パーフェクトな体で帰ってきたぞ!」(ダイスケはん)

ダイスケはんはハイスタからもらった宝物をひたすら絶叫で回想しつつ、不完全な状態でAIR JAMに臨むしかなかった過去の悔しさをある種の怨念のようにぶつけ、今こそ完全体であることをアピールする。そして、その言葉に続いて披露されたのは“皆殺しのメロディ”だった。THE BLUE HEARTSのカヴァー曲だが、ホルモンに続いてAIR STAGEに登場するザ・クロマニヨンズへのバトンでもあり、Hi-STANDARDへの感謝があるからこそ全員を根こそぎ倒して帰るという宣言でもあっただろう。何にせよ、「世代を超えてカルチャーを繋ぐ」という命題を掲げている今年のAIR JAMの中で、ロックの血脈を繋いでドラマにしていく視座もそこにはあったはずだ。

――と、感動に浸れていたのも束の間、最後の最後に演奏された楽曲はなんと、2011年にAIR JAMに初出演した時から何度も演奏されてきた“A・RA・SHI”だった。どこからどう聴いても“”A・RA・SHI”なのに、それを取り巻く音、アレンジは徹底的にホルモン印のカオティックな曼荼羅を描いている。ナヲがドラムを降りてピンヴォーカルになり、すぐさまKOUICHI(10-FEET)がドラムに鎮座したひと幕も含めて、「まさか」の連打。ホルモンでしかできない、ホルモンでしか鳴らせない、というかホルモンにしか許されないフィナーレだった。
SET LIST(AIR STAGE)
01. シミ
02. 恋のスペルマ
03. 恋のアメリカ
04. ロック番狂わせ
05. 「F」
06. 皆殺しのメロディ
07. AxRxSx~そうさボクらはSuper Boy!~
TEXT: 矢島 大地
PHOTO: 浜野カズシ