AIRJAM 2026 LIVE REPORT
ENTH ――「時折こぼれ落ちちゃう感情もひっくるめてカッコいい」
AIR JAM2026、JAMステージのトップを飾るのはENTH。まだ10-FEETの余韻が残る中、サウンドチェックからエッジの立った演奏を見せてくれ、フェス全体の繋がりを意識しながら、ただのAIR JAMの出演者の1組には収まらないぞ、という気概を感じる。荒々しくも頭を下げながらバトンを受け取るような形だろうか、横並びのステージで手を振り合っているようにも見えた。
ENTHのライブ恒例である、バニーガールのおじさん(バニーガールのおじさん?バニーボーイ?)がメンバーのダト・ダト・カイキ・カイキ(Ba./Vo)、ナオキ(Gt.Cho)、タクミ(Dr.Cho)に強めなんだろうなと思わせるお酒のショットを振る舞ってライブがスタート。

1曲目は『Gentleman Kill』。いきなりENTHの空気にガツンと持っていく。AIR JAMに出られた喜びを前身から放出しつつ、浮かれたり浮き足立ってはいないのが印象的だ。ENTHのライブを見ているといつも思うことだけど、少しのふざけをまぶしながら、締めるところはきちんと締める。無表情で鋭利なボケを繰り出しているような、そんな高度な技術をENTHのライブからは感じるのだ(そういえばバニーボーイだっていつも説明がない)。カイキのボーカルはもちろん、ナオキのギターも、タクミのドラムも、大きな空の下、気持ちよく鳴っている。特に1曲目から炸裂したタクミのドラムの気持ちよさは、この日の観客を初っ端からグッと掴んだのではないだろうか。その証拠に、オーディエンスもこの楽しさに乗り遅れまいと、想い想いの楽しみ方で、ライブを堪能している。

ヘヴィな演奏が胸を貫く『”TH”』を聞かせたかと思ったら、ミドルテンポな『A FLY』も交えてきて、彼らが奏でるグルーヴはどんどん加速していく。ここで個人的な話で恐縮だが、42歳の僕は、Hi-STANDARDを知った時にはすぐに活動休止してしまって、VHSで何度も何度もAIR JAMを見た世代だ。世代は少し下になってしまうけど、多分活動休止前のAIR JAMを生で体感していない世代のENTHがこうして堂々と自分たちのライブを披露しているのに、勝手に感情移入してグッと来てしまう。
「こんな所まで来ちゃった」とMCでカイキが語る。「解散すっか」と軽口を叩く余裕があるのが、とても頼もしい。そう、つまんない引用になってしまうけど、憧れているだけでは掴めないものがあって、敬意を持ちながら、この日のライブを自分たちが掻っ攫ってしまおうという野心も見え隠れするのが素敵だ。

「言うことねえっすわ」というカイキのMCはこの瞬間は本音だったんだろう。でも、この瞬間は、言葉よりも『”EN”』やすごい速さで駆け抜けていく『BLESS』という、披露してくれた楽曲が何より雄弁に語っていると感じた。
オーディエンスを踊らせる『SCUM DOGS FART』や『Poochie』をぶち込んで、スタジアムの空気を掌握した中で、カイキがいった「ENTHが日本のパンクロックの歴史に載っているってことだもんな」という一言。いつも俯瞰を崩さず、自分たちと観客を楽しませるENTHというバンドが、少しだけ自分に酔っているように思えて、凄く感動してしまった。これがあるから、人物やライブを含めて音楽を追うのはやめられないよな、と感じた瞬間だった。

個人的な彼らのライブアンセムである『ムーンレイカー』。カイキも煽っていたけど、自然発生的に会場がシンガロングしていて、快晴の天気も相まって、いつものライブハウスとは違った相乗効果が生まれていたような気さえする。
最後の曲の前に、カイキが少し照れ隠しも交えながら、口にする。
「拝啓、この曲を作った時の俺、色々遠回りもしたけど、今、AIR JAMのステージに立ってるぜ」と。
そこから『Get Started Together』。この曲をこの場で聞けるのは自分たちのような観客も嬉しいけど、何よりENTHのメンバー3人が一番嬉しいんだろうなと思わせる。そういうライブができたらもう勝ちなんだと思うけど、それが全身から溢れているように感じた。

感動的なMCをラス前にしていたけど、特に余韻を残すこともない去り際もめちゃくちゃカッコ良かったと記したい。バンドとしてはもしかするとこの日のAIR JAMはかなり大きなポイントになるライブだったと思うが、だからこそこのライブをしがむ事なく、サラッと終わらせることで、このあともバンドは続いていくんだ、日常も続いていくんだと観客にメッセージを託しているようで素晴らしかった。
抜けるような青空の下、ライブハウスの空気を交えて、熱気と汗をスタジアム全体に持ち込んだ、そんなライブを見せてくれたENTHは改めてかけがえの無いバンドだと、この日のライブを見た人はみんな感じたのではないだろうか。
SET LIST(JAM STAGE)
SE. ☆愛♡醒☆
01. Gentleman Kill
02. “TH”
03. A FLY
04. “EN”
05. BLESS
06. SCUM DOGS FART
07. Poochie
08. Urge
09. DESTINE
10. ムーンレイカー
11. Get Started Together
TEXT: 佐久間トーボ
PHOTO: 深野 輝美